家庭から排出される汚い水を清浄するときに、浄化槽は必要不可欠となります。浄化槽がいっぱいになれば、当然ながら固形物を汲み取る処理をしなければなりません。ここでは浄化槽がいっぱいになった場合の対処法について、自分でも対処できるのか解説していきます。
目次
浄化槽の種類
通常、浄化槽には主に2タイプあります。以下、それぞれ説明していきます。
合併浄化槽
洗面所や浴室、キッチンを使用すると、生活で使用した排水が出ます。この生活で使用した排水を清浄する役目を持つのが、合併浄化槽となります。
合併浄化槽には一定水準で汚水をきれいにできるものが該当します。BODといわれる水の汚れレベルを示すときの基準が使用され、BOD除去率が90%以上で、かつ浄化水のBOD比が1リットルにつき20mg相当出なくてはなりません。
これは下水道処理場とほぼ同じ基準の浄化率であることを表しています。
単独浄化槽
他方、単独浄化槽は便所から出た汚い水だけを清浄にする設備です。BOD指標だと、除去率が65%以上、浄化水のBOD比は1リットルにつき90mg以下となっています。単独浄化槽は製造された時期によって数種類のタイプに分かれます。
年代を古い順にすると、「腐敗タンクタイプ」「全ばっ気タイプ浄化槽」「分離ばっ気タイプ浄化槽」「分離接触ばっ気浄化槽」の4タイプとなります。年代が新しくなればなるほど動作が上がりますが、いずれにしてもトイレの汚い水のみきれいにするというのが共通点です。
後になって、浄化槽法が整備されて、最近では単独浄化槽は販売停止されています。この法律は水質汚染の進行から環境を保護するためのものです。
浄化槽の点検・汲み取りのタイミングは?
ここからは、浄化槽のメンテナンス・汲み取りのタイミングについて解説していきます。
浄化槽法において、浄化槽管理責任者に次の3つのことをおこなうことを義務付けています。
・法定検査
・保守メンテナンス
・定期掃除
保守メンテナンスは浄化槽装置が正常に動いているかチェックし、年1度の掃除の他にも掃除が必要かどうかを定めるものです。保守メンテナンスの頻度は2〜6か月に1度くらいで、浄化槽のタイプや処理方法、人数によって違ってきます。
法定検査や掃除についても、必須項目や回数が決められています。実施内容や時期を確認していきましょう。
法定検査時期
法定検査には2通りあって、浄化槽使用開始から3か月を過ぎてから5か月以内に実施する「水質に関連する検査」(7条検査)、そして毎年1度定期的に受検する「定期水質検査」(11条検査)が義務となっています。
また保守メンテナンスと法定検査は両方必要なので、保守メンテナンスをしていれば法定検査パスできるということではありません。
法定検査時期になると、アポも取らずに専門業者が訪問してくれるのではなく、浄化槽管理責任者が指定された専門業者に依頼して行われるものです。うっかり依頼することを怠ってしまうと勧告・罰則を受けたりするケースもあるので注意が必要です。
法定検査内容
検査内容は、メインとして「外観調査」「水質調査」「書類調査」の三項目があります。外観調査は浄化槽法にしたがって数種類の検査項目があり、設置や悪臭状況、水流が滞っていないかも検査対象です。
水質調査は、水素イオンや残留塩素など、水に含まれる成分についての調査です。書類検査は過去記録と照合し、設置ができるかを定めます。
全国の各自治体や処理方式によっては検査項目の内容が変わることもあるようです。しかし、おおよそ先述のような項目内容で検査が実施されるようです。
定期クリーニングとくみ取り時期
定期クリーニングは、少なくとも年1度以上行う必要があります。全ばっ気方式浄化槽を使用しているケースでは、6か月に1度以上掃除がマストなので、さらにスパンが短いです。この点は注意しておきましょう。法律で決められているので、違反すると罰せられます。
ちなみに、掃除は自分ですればいいわけではなく、市町村長から認められた浄化槽掃除専門業者に依頼します。くわえて、浄化槽の管理責任者は、掃除・点検の記録を3年間の保存義務があることにも注意が必要です。
浄化槽のくみ取りが必要な理由
「浄化槽のくみ取りは必要なのかどうか」について迷っているご家庭は多いかもしれません。どうしても掃除の作業は手間に感じてしまうものです。では、そのままにして問題ないか説明していきます。
くみ取りしないと排水不良が発生
浄化槽はくみ取りという掃除作業が必須です。浄化槽はそれぞれの排水から流れてきた汚水を固形物と液体に分けるので、固形物が溜まっていきます。また汚水を浄化するときに、泥のような汚物も生じます。
そのまましておくと、異臭が生じたり、排水できなかったりということが起こり、浄化槽の動作が落ちることがあります。したがって、定期的な掃除は必須です。
浄化槽の動作が落ちたままにすると、汚水が直接川に流れ込んでしまい、環境破壊の原因になります。環境をきれいにする役割の浄化槽が、逆に環境破壊を引き起こしてしまうのです。
そういった最悪の事態をさけるためにも、コンスタントに浄化槽はくみ取りをして、動作を維持できるようにしておくことが大事です。
浄化槽の取り扱い規則
日本には浄化槽法という法律が存在します。これは国が決めた浄化槽の規則です。先述の「浄化槽設置は合併浄化槽だけ」というものにプラスして、使用や掃除、違反項目について細かに決められています。
そのなかに、法定検査と保守メンテナンスという項目があります。これらは決まった時期に実施されなければなりません。定期検査の場合は、毎年する必要があるのです。
したがって、浄化槽を設けているケースでは、定期的に検査・くみ取りがされていないと浄化槽法によって罰せられることもあります。
浄化槽のつまりは自分では対処できない
浄化槽のつまりがどうして自分では対処できないのかというと、はじめに浄化槽の構造から理解する必要があります。浄化槽は2タイプの微生物の力を借りて汚水を浄化していきます。
汚水浄化の大きな流れとして、はじめに浄化槽に入った汚水は、嫌気性微生物の力によって固体と液体に分けられます。そして、液体となった汚水は「好気性微生物」によって、さらに分けられます。最終的に、きれいになった水のみが外に排出されるのです。
このとき、浄化槽には嫌気性微生物によって分けられた固体が残留します。さらに、この固体も軽量のスカムと重たい汚泥に分離されていて、スカムは槽の上の方に、汚泥は下の方に沈みます。
このスカムや汚泥が蓄積されると、浄化槽がつまりをひき起こすことになります。そのため定期的にスカムと汚泥を専門業者にくみ取ってもらわなければならないのです。
くわえて、くみ取りのときに付属する機器や機械類のクリーニング、掃除も業者がしてくれます。これは先述の浄化槽法によって決められていて、掃除頻度も同様にこの法律によって決められています。
法律では、通常の使用状況に応じて年1度以上と決められていますが、処理水質の低下、スカムや汚泥の目立つ堆積、浄化槽内水位の上昇などが確認されたときは、レギュラーであってもくみ取り作業をしなければなりません。
よって、定期メンテナンスが必須になります。お手洗いの流れに異変を感じた場合も、すぐに専門業者に依頼するのがいいでしょう。
まとめ
今回は浄化槽がいっぱいになった場合の対処方法についてお伝えしてきました。浄化槽のつまりは、自分で対処できないということもお分かりいただけたのではないでしょうか。
国によって法律も整備されている浄化槽です。正しいくみ取り時期の把握、入念なメンテナンスはマストといえるでしょう。